昔から患者さんも歯科医も保険診療が普通で自費診療は高級補綴物に限られ、いわゆるお金持ちのぜいたく品と思われていた節があります。すなわち、自費診療イコール高級品というイメージを患者さんのみならずわれわれ歯科医も抱いていたのは否めない事実です。したがって患者さんにとって自費の補綴物はより高級なブランド品のようなイメージで、必要品ではなくぜいたく品という認識が強く、ある種のステイタスに思われていたようです。
これまで自費補綴物のウリとして審美性と快適性ばかりが強調されてきましたが、『自費補綴物は必需品とまではいえないまでも快適な食生活、ひいては精神的かつ肉体的健康を維持するためにも必需品である』もっと簡潔に『最大の長所は生体に害がない』ことです。
矯正治療
歯列不正の改善により、虫歯や歯周病の予防、機能的な咬合関係に改善する。
→見かけを良くするのが最大のメリットではない
オールセラミッククラウン
メタルクラウンは金属アレルギーや歯肉着色などの問題がある。レジン前装冠やジャケット冠に含まれる刺激物質は身体にやさしい生体材料とは言い難い。一方セラミックはこれらの問題をクリアし、生体に為害性が無く且つ審美性にも優れた理想的な歯科材料である。
→審美性(白い歯)が最大のメリットではない。
金属床
レジン床の最大の弱点は,顎堤や残存歯にダメージを与える義歯床のたわみであり、金属床はこれをクリアするもの。またレジン床は化学物質として信頼性に劣る。
→良好な装着感,頑丈さが最大のメリットではない。
PMTC
細部の清掃により初期う蝕の早期発見、歯周病を予防する。
→きれいになるのが最大のメリットではない。
インプラント
中間欠損においてインプラントは、ブリッジのように隣在歯に負担を強いることはない。
また床義歯のように顎堤に持続的なダメージを与えることがないばかりか、むしろインプラントから直接伝わる力により歯槽骨が活性化し、顎堤の吸収を防ぐ利点がある。また咬合力の増加により物が良く噛めるという機能性向上ばかりでなく咀嚼筋を介して脳の活性化(ボケ防止)につながる。
→取り外し式の入れ歯が固定式の歯になるのが最大のメリットではない。
つまり『歯科における自費診療は装飾品やブランド品と比較できるものではなく、一種の人工臓器ともいえるものである』ことを認識していただくことが大切だと思っております。
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